第136章 進達
「―――――代わりにアリシアを殺したのもお前か?」
「アリシア?誰だそりゃ、いちいち殺した奴の名前なんか覚えちゃいねぇよ。」
「ふざけんな。わざわざ調査兵団にまで赴いて――――、変な駆け引きを持ちかけて、利用して、殺しただろう。」
「――――ああ。あの……馬鹿な女か。そりゃお前も同罪だろ。お前を手に入れたくてあの女は自分の意志で話に乗ったんだからよ。」
「――――………。」
胸糞悪ぃ話をしながら、反撃の機会を待つ。
――――そうだ確かに俺の罪でもある。
が、そんなことは今に始まったわけじゃねぇ。
何十人、何百人殺して来たか、数えてもない。
段々とその感覚は麻痺して―――――“命”というものの重さがわからなくなっていく。
「なぁリヴァイ。どうしてお前が調査兵になったか俺にはわかる気がするよ。俺らはゴミ溜めの中で生きるしかなかった……その日を生きるのに精いっぱいでよ。世界はどうやら広いらしいってことを知った日は……そりゃ深く傷ついたもんだ。ちんけな自分とそのちんけな人生には何の意味もねぇってことを知っちまった………。」
足音が、近づいてくる。
カウンター内の瓶に反射する奴の姿を確認し、射程圏内まで―――――引き寄せる。確実に殺せる距離まで。
「……だが救いはあった。やりたいことが見つかったんだ。単純だろ。単純だが実際人生を豊かにしてくれるのは“趣味”だな。」
「……趣味か。俺の部下の頭を吹っ飛ばしたのもあんたの趣味か?」
「ああ。大いなる目標のためなら殺しまくりだ。お前だっててめぇのために殺すだろ?その欲を――――、あのナナって女を抱くために邪魔する奴は……ナナの命を脅かす奴は――――殺すだろうが。」
「――――ああ。そうだな。間違いねぇ。」
酒場に置いてあった猟銃を、カウンター越しに放つ。
もちろん標的を目視しようと頭なんて出しゃあ撃ち抜かれて終わりだ。銃身だけを逆手でカウンタ―上に出して、標的はカウンター内の瓶に映るぼやけた姿を頼りに―――――。
運が良ければ致命傷、無理でもこの酒場から逃げる隙ぐらいは時間を稼げる。