第136章 進達
少しの食事をとって、眠りにつくために部屋に入ろうとすると――――、バタバタと、足音が聞こえた。
「………何……?」
「――――姉さん!いるの?!」
――――ロイだ。誰から聞いたのか。エミリーか……。
困った。
私がこれからやろうとすることを、ロイは必ず止めにくる。
下手をすれば……今度はロイに監禁されかねない。それほど私を大事に想ってくれているのは、わかるけれど……私はどうしても、行かなくちゃいけない。私は静かに扉を開けて、ロイを呼んだ。
「――――ロイ、ここにいるわ。」
「姉さん……また、勝手なことして!!!どれだけ心配したか分かってるの?!」
「ごめん……でも、エルヴィンが、調査兵団のみんなが、危ないの。だから私は――――……行かなくちゃならない。」
ロイを真っすぐに見つめて伝える。私の意志の固さを、どうか分かって欲しい。
「――――姉さんは大丈夫だよ。調査兵団が例え、全員死刑になっても。だから必死にこの苦境をひっくり返す危険なんて冒さなくていいんだ!ずっと隠れて静養してればいいんだよ……!」
「………なんで……?なにを根拠に………。」
「――――王政の奴らと取引した。姉さんの命を奪わないことを条件に、―――――疫病の特効薬の精製方法・精製の権利を全て王政に委ねた。――――疫病の強毒化も、進めてる。」
ロイの言葉に―――――体が冷たくなっていくような心地がした。
なんて、言った……?
私を守るために――――……疫病の、強毒化……?
特効薬の精製権を王政に――――……?それはつまり………王政は、都合よく民衆を葬る手段を手にするってことだ。
――――余った人類を、自分達でふるいにかけて。