第135章 伝心
―――――――――――――――――
馬車が王都に入ってから、特に周りが騒がしくなった。人殺し集団の頭が処刑台に磔られるのを一目見ようと、石でも投げようという民衆が集まって来ているらしい。
――――ハンジ、リヴァイ……頼んだぞ。
お前たちの判断を信じている。
――――これまで俺は全ての采配を自らの頭で行って、指示をしてきた。確固たる指揮系統を守って――――、従わせ、死なせてきた。
それは――――、自分以外の誰かを信じきることができなかったことと、そして何より―――――、同じように自分の判断で仲間を死なせる重責を―――――負わせたくなかったからだ。
だが今、あの2人に任せてそれぞれが自らの判断で動くことに、なんの心配も懸念も抱いていない。
――――彼らはやる。
必ず。
そう信じて疑わない。
「――――リヴァイだけじゃなく……俺も、変わったな……。」
これまでのことを思い返しながらふ、と小さくため息をついて、俺達が変わるきっかけになった彼女を想う。
――――兵団組織と己の命が危ういこの状況であっても女のことを考えているとは、我ながらどうかしていると思う。
その時、馬車が止まった。
――――憲兵団本部の門前に差し掛かったのか?そして外から聞き覚えのある声がする。
――――ナイルだ。
ご丁寧に師団長がわざわざお迎えに来てくれるとは。まさに犯罪者の扱いだな。そう笑いが零れそうになった時、馬車の扉が開いた。
「――――……ナイル。」
「――――ざまぁないな、エルヴィン。」
ナイルを見上げると、その目線が一瞬外を向いた。――――なんだ?この男が任務遂行中に他所に気を取られるとは珍しい。
「…………?」
「――――危険物や武器を所持していないか、お前自身と馬車内を確認する。おかしな真似はするなよ。すぐに終わる。――――お前の顔を一目見てやろうという民衆に、顔でも拝ませてやったらどうだ。」