第135章 伝心
「――――お前、俺がいなきゃどうしようと思ってたんだよ……。」
「……えっと……。石でも投げたら、気付いて窓を開けてくれるかなって。」
「~~~~………エルヴィンに同情する。」
「……無謀ですか?」
「無謀に決まってんだろ馬鹿野郎。」
「……日頃の行いがいいのでしょうね。」
「は?」
「――――こうして、ナイル師団長がまさか協力して下さるなんて思いませんでした。ありがとう、ございます。」
ナイル師団長を見上げて、御礼を言う。
同期を死刑台に送るための出迎えなんて、したくないだろうに。でもその立場から――――それを避けては通れない人だ。どれほど胸中に苦しい思いを抱えているだろうか。
それに――――こんな私を放っておくことができないところを………きっと、エルヴィンが言っていた――――……酒場のマリーさんは好きになったのだろうと思う。
「――――エルヴィンはベタ惚れだ。お前に。」
「はい、知ってます。」
「生意気な……。」
「――――私もです。だから、生きるも死ぬも、彼と一緒に。」
「――――同類だな、お前らは。」
――――本当は少し怖い。
あの蒼い目はなんでも見透かしてしまって――――、私がダミアンさんの手に堕ちたことまで、その一瞬でバレてしまって――――嫌われてしまうんじゃないかと。
でも大丈夫。
エルヴィンから学んだ嘘は、上手になったから。
何事も無かったかのように、
無事だって
待ってるって
愛してるって
それだけが――――伝わればいい。