第135章 伝心
「――――お前……!補佐官!!なにやってんだ……?!」
「ナナです。ナイル・ドーク師団長。」
「ナナ……、あぁもう今そんな呼び方はなんでもいいだろう!何やってんだ!?今調査兵団がどういう立場か分かってねぇのか?!」
「――――お尋ね者、ですかね……?」
「ああそうだよ!まさに今エルヴィンが―――――……。」
言いかけて、ナイル師団長は黙って私を見た。
「……お前、エルヴィンに会いに来たのか……?!」
「―――はい。」
「――――会えねぇよ。お前を捕まえることだけはしない、見逃してやるから……さっさと行け。」
「嫌です。」
「は?!」
「嫌です。絶対に一目――――会うって決めてます。」
「決めてるとかじゃねぇんだよ!」
「――――エルヴィン団長と、いつまでも共にって決めているんです。」
私が真っすぐに見つめると、ナイル師団長は心底面倒臭そうに頭をぼりぼりとかいた。
「――――あぁクソッ……なんで俺は気付ちまったんだ……!」
「…………?」
「来い!!!」
ナイル師団長は、私を物陰に押し込んで――――足元の泥を指で掬って、私の顔に塗りつけた。
「……汚しとけ、せいぜい。そんなお綺麗なツラしたクソガキなんていねぇんだよ……!」
「はい……。」
「いいか?エルヴィンの馬車を正門前で停める。――――一瞬だ。一瞬だけ、扉を開けてやる。そこしかないぞ。」
「……っはい!!」