第135章 伝心
王都の街中で、この混沌とした状況に動揺する市民たちの噂話が飛び交っている。しばらく外界から遠ざかっていた私にとっては、とても大事な情報たちだ。
「調査兵団が民間人を殺したって!!出頭命令が出たらしいよ。」
「いや、もう団長は捕まって護送中だと聞いたぞ?」
「――――あぁそれであの、広場に何か作ってんのは……。」
「処刑台だろ。おっかないねぇ。」
「――――エルヴィン……!」
護送中というのが本当だとしたら。
憲兵団本部に連れて行かれる。もう、そこしかない。
でも……話すなんてもちろん不可能で、紙切れの一枚すら渡せないだろう。
ならハンジさんにこの情報を伝えに行く?
……でも、ハンジさんが今どこにいるのかもわからない。
リヴァイ兵士長も同じだ。
下手に動いて、足を引っ張るわけにもいかない。
――――何が正しいかなんて、今はわからない。
なら―――――心のままに。
後悔しないように。
私は目立たないように髪を結ってまとめあげて深く帽子をかぶり、その背格好を生かして少年のような出で立ちに扮装して、中央憲兵支部を目指した。
――――もうすぐエルヴィンを乗せた馬車が着くのだろう、どこから情報を得てくるのか、住民たちはそれを一目見ようと集まってきている。
好都合だ。
人込みに紛れれば、私も中央憲兵に見つかりにくくなる。
憲兵団本部前に人だかりができて――――、その中に、背の高い、一角獣を背に背負った見覚えのある人がいる。
目線を送っていると、流石だ。
私に気付いた。
――――ナイル・ドーク師団長。
ぎょっとした顔をして、辺りをきょろきょろと見回している。
――――中央憲兵がいないかどうか、確かめているのだろう。足早に私のところに近付いてきて、腕を引かれて建物の影に押し込まれた。