第135章 伝心
――――そう、3日あれば……きっと決着がつく。
エルヴィンが死刑台に登るなら、私も共に行こう。
どこまでも。
ダミアンさんの手には戻らない。
愛しいあの人と、死んだって離れないと―――――誓いどころか約束にすらならない、小さく切ない言葉を交わしたから。
「――――良くない覚悟をした目を、するんじゃない。――――お前が死んだらロイもクロエも……ハルも……泣くぞ。」
ボルツマンさんはまたもや、やれやれとため息をついて――――、私の髪を、ぽんぽん、と撫でた。
それがとても嬉しくて――――、ふと、笑ってしまう。
「――――ボルツマンさんも、泣いてくれる?」
悪戯に彼を見上げて問うと――――、ボルツマンさんは驚いた顔をした後に、ふっと笑った。
「――――いや。」
「えっ。」
「――――リカルドに言い訳する、詫びる言葉を考えるのに精いっぱいで……それどころじゃないな。」
その言葉を聞いて、鼻の奥がツン、と痛む。
沸き上がる涙を見せないように、ボルツマンさんにギュッと、抱きついた。
「――――おい……。調子に乗るんじゃない。お前はただの他人だ。」
「――――ただの他人に、ここまで協力してくれるなんて、それはそれでお人好し過ぎて心配です。」
「………減らず口は母親譲りか。」
「ふふ……はい。」
「………死ぬんじゃないぞ、ナナ。」
「――――うん。」
――――力が漲るようだ。
大丈夫、きっと会える。
エルヴィンに。
私は清掃会社の大荷物に紛れ込んで――――病院を抜け出した。