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【進撃の巨人】片翼のきみと

第135章 伝心




「―――――それで?この悪趣味な悪戯はなんのつもりだ、ナナ。」



ボルツマンさんの声を聞いて、私はむくりと起き上がって、少し笑った。



「―――――流石です。」

「あんな小芝居で私が騙されるとでも?まぁ……素人目には十分騙せていたみたいだが。可哀想なほどに憔悴していたぞ、公爵様がな。」

「………あの場で、私の嘘を暴かれてしまえば――――……それまででした。なぜ、手を貸してくれるのです……?」

「――――……さぁな。面倒なことは御免だが――――……お前が下らない理由で、こんな医者にとって悪趣味な悪戯をしかけるわけもなかろう。それに………。」



ボルツマンさんは私の右腕を取って、隠していた二の腕を露わにした。そこにはくっきりとした歯形と――――、皮膚が裂けて出血した痕がある。





「――――吐血したと見せかけるのに、本当に自ら血を流すとは………そこまでの覚悟があったんだろう。何が起きてる。」





看護師が置いて行った消毒液をガーゼに染み込ませて、そっと傷に当ててくれる。

じわ、とした少しの染みる痛みに、眉が寄る。



――――どこまで話して良いのか。

巻き込みたくはない。

ライオネル公爵家から圧力を受けるようなことがあれば、この病院だって―――――ボルツマンさんだって、ただじゃ済まない。



「――――………。」



私が考えあぐねて黙ると、ボルツマンさんはふっと息を吐いて、小さな声で言った。





「――――おいそれと体に傷を付けるんじゃない………。リカルドが悲しむだろう。」



「――――………!」





父のように、いてくれるつもりなんだと、思った。

本当に面倒事に巻き込まれたくなければ――――、長いものに巻かれて、権力に沿う楽な生き方をするのなら、私が運ばれてきた時点でその嘘を暴いて――――、ダミアンさんに恩を売れば良かったのに。



――――……話していいのかもしれない。



この、父が信じ……長きにわたって共に戦ってきた戦友である――――



私のもう一人の、父のような人に。



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