第135章 伝心
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「――――エルヴィンはいるか?!いたな!!」
トロスト区の調査兵団支部の扉を跳ね除けて来たのは、ハンジだ。
「エレンが巨人についての重大な情報を思い出した!それが……大変なんだ!この作戦を考え直した方がいい!!」
「――――結論から聞こう。問題はなんだ?」
「――――レイスは……エレンを食う気だ。」
ハンジが語ったのは――――、ユミルとベルトルトの会話から推測される“巨人の能力が食った者へと継承される”というものだった。
―――エレン奪還作戦の最中で私の脳裏にもよぎった。
ライナーが巨人を投げて寄越したことに。
……もしかしたらエレンでなくても、いいのかもしれないと。
――――私は昨日、レイス家の領地に潜入させていたサッシュから届いた報告書をハンジに手渡した。この報告書を読む限り―――――レイス家の、“血”が何かしら巨人化能力の中でも特別に重要な役割を担っているに違いないと推測できる。
「―――エルヴィン団長!!」
その時、兵士の一人が慌てた様子で私を呼んだ。
「中央第一憲兵が団長に出頭を命じてます。組織殺人の容疑だと騒いでます……。それも街の真ん中で……。」
「……殺……人……?」
ハンジが不安そうな目を向ける。
――――なるほど中央は、どうやっても調査兵団を――――、俺たちを排除したいらしい。
「ハンジ、ここから離れろ。」
「は……?!どうするつもりなの?!リヴァイ班は…?!」
「リヴァイが判断する。お前もだハンジ。自分の判断に従って動け。俺は調査兵団の表の顔を通す。敵が仕掛けてくれば予定通りとはいかないさ。臨機応変に対応しろ。」
――――俺はもしかしたら、博打に負けるかもしれない。
そんな一抹の不安があったのか、昔――――ハンジが嫌だと言ったそれを、ついに託す。
随分変わった。
俺も、彼女も。
―――――きっと今ならハンジは、嫌だとは言わない。