第135章 伝心
エレンとヒストリアをリーブス商会が中央憲兵に引き渡して、その後をつける。その先にいるはずだ。この世界の頂点にいる、ロッド・レイスとやらが。
「――――兵長、リーブス商会と中央憲兵の引き渡しですが……おかしいです。リーブスが手配していた馬車が……一向に出て来ない。出て来たのは……黒塗りの葬儀用の馬車、だけ……?」
望遠鏡をのぞきながら、サシャが言う。
「――――ちっ……仕掛けてきやがったか。行くぞ。」
警戒をしつつ、取引現場に向かうと―――――そこには無残に変わり果てた姿の、リーブスとその部下の亡骸が転がっていた。
……首をナイフで一掻きか。
迷いもない太刀筋。
――――殺し慣れていることがわかる。
――――人間を殺し慣れた輩に、人間を殺す覚悟ができていないこいつら。まともに戦って勝てる可能性は、低い。
104期の面々の顔が、みるみる青ざめる。
「……リーブス、さん……っ……!」
「……待て、もう一人いたはずだ……あいつ――――フレーゲルは……?」
ジャンが辺りを見回すと、遠くの木の影で震えながらこちらを見ているフレーゲルの姿があった。
「フレーゲル!!無事だったか……!」
ガタガタと震えるフレーゲルが涙ながらに話したのは、黒いコートを着た長身の男を筆頭とした中央第一憲兵に―――――リーブス会長も、その部下たちも殺されたのを見たということだった。
「――――立ち止まってる暇はない。エレンとヒストリアを追う。フレーゲル、お前は山を下りてトロスト区に向かえ。中央憲兵に捕まれば殺されるぞ。せいぜい注意して行け。」
「ひ………っ……!」
フレーゲルは震える足をなんとか動かしながら、草木をかき分けて山を下って行った。
俺たちはここから最も近い、王都への道中に通るはずの地区――――、ストヘス区に先回りして葬儀用の馬車が到着するのを待った。
――――あんな人間が住んでいない場所に葬儀屋が出張るわけがねぇ。
あれは中央第一憲兵が手配したもので――――、エレンとヒストリアを乗せている。