第134章 恥辱 ※
「――――そんなに簡単な事じゃない。君たちが王政を例え打倒したところで、何ができる?この壁の中で人類を統治できるのか?――――何も知らない、何の力も持たない――――、生まれながらにして“統治されるべき側”の君たちが。」
――――この確固たる自信はなんだ。
――――まるで自分たちが違う生き物であるとでも言いたげだ。貴族の中でもとりわけ上層の……ダミアンさんや王政幹部に座る人たちのこの――――……かけ離れた次元で話をしているような感覚は。
――――その時、エルヴィンのお父様が立てた仮説を思い出した。
『壁の中に移り住んだその時、人類は王によって記憶を改竄された。さもなくば、この壁の中で矛盾だらけの歴史の中、何の疑問も抱かずに生きて行けるはずがない。』
エレンも女型も声で巨人を操った。
そして―――――巨人は元々人間だった可能性。
無理矢理結びつけるとしたら―――――、巨人の力の使い方次第では、人間の記憶さえも改竄できるかもしれない。そんな突飛な発想が頭をよぎった。
「――――“嫌な仮説”に怯える顔ですね。」
「………!」
「――――あなたが知りたくてたまらない、“この世界の真実”を――――教えてあげようか。」
ダミアンさんが目を細めて、私を誘う。
ずっと追い続けてきた、この世界の真実。
エルヴィンが追い求めている答え。
――――これはきっと嘘じゃない。
この人は――――……知っているんだ。
「――――なぜ王政がエレンとヒストリアを狙うのか。なぜ、ライオネル家がここまで王政に口を出せるのか――――、その全てが、この壁の世界の謎に、繋がる。」
あまりに魅力的な“答え”に、彼の目を見つめて私は唾を飲んだ。