第134章 恥辱 ※
「………どうにも彼を好きになれないな………。」
ずっと不思議だった。
この方の王政の中での立ち位置が。
王政の中心で全ての物事を動かせるだけの権限も、発言力もあるはずなのに――――、表立って出て来ない。
それどころか、現王政の中心に座る人たちとはまた違う――――、どこか俯瞰したような立場にいるのは、なぜなのか。
もしかして………レイス家と何か、関係が、あるの……?
でも下手に口には出せない。
ただ、ニック司祭が亡くなったことは絶対に知っている。
――――もしかしたらむしろ、この方もその命令に噛んでいたかもしれない。
「あなたの愛する人なら、と思っていたのだけどね。」
「――――だけど……なんですか……?」
その言い方にゾクリとする。その続きは――――きっと、良くないことだ。
「――――………。」
「ダミアンさん……!何か、何か知っているんですか……?!これから彼らに、何か……!」
「――――今にわかるよ。彼は危険だ。この世界の安寧を脅かす。」
ふふ、と小さく冷たい笑みを浮かべて、ダミアンさんもティーカップに口をつけた。
「元はと言えば、王政が……!人類が知りうるべきこの世界の情報をひた隠しにして――――、民衆を欺き、ウォール・マリアを奪われた今も、多くの民が飢えて死にゆくこの時も、何も打開策を試行せずにいるからじゃないですか……!」
「――――そうだね。」
「安寧の先にあるのが人類の滅亡なら、抗う者が出て来るのは当然のことでしょう……?それが私たち、調査兵団だったというだけのことです……!」
「――――だが我々には、人類を100年生きながらえさせ統治してきた事実がある。」
「――――………。」