第133章 波瀾
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「Amazing……grace……how sweet………the sound………。」
ベッドの上でエルヴィンの瞳のような蒼い空を見上げて、神に祈る歌を歌う。
どうか彼らを守って――――、それが叶うなら、彼らが無事でいてくれるなら、私は何にだって祈る。
この魂を悪魔に捧げてもいい。
「――――お嬢様?」
「………ハル。」
そっと扉が開いて、ハルが心配そうな顔で様子を伺う。
「どうぞ?」
「ええ……。ご気分は……?」
「うん、随分いい。ありがとう。……もう調査兵団に戻れそうなくらい。」
「駄目です。」
「………ちぇっ。」
「数日前よりはマシですけど、まだ満足には食べられていないでしょう?痩せすぎです。女性は少しふっくらとしているほうが男性が好むと言いますよ?エルヴィン団長も、もう少しくらい太ったっていいと思っていらっしゃいますよ。」
相変わらずハルはエルヴィンと私が幸せに上手く行くことを強く望んでいる。――――それはロイも同じだ。
「ハルの作ったスープなら食べられるかもしれない。」
「………甘え上手になりましたね。いいですよ。なんでも用意します。」
「嬉しい。ハルの料理はまるで魔法みたい。私に染み込んでいくから。」
「食べられるのは良いことです。では、またご夕食時に参りますね。」
ハルはそう言って柔らかな笑みを残して部屋を出た。
――――ロイに血液検査を頼んで、結果を待っている。
精神科の先生にも明日往診してもらって―――――ちゃんと知らなきゃ、自分の身体のことを。
歌を口ずさみながらまた窓の外を眺めて、うとうと微睡む。