第133章 波瀾
「……私には……とても務まりません……。」
「嫌か?」
「私には……とても………。」
「わかった。」
ヒストリアの襟元を掴んで、掴みあげる。
「う……!?」
「じゃあ逃げろ。」
「リヴァイ兵長?!!?」
「俺達から全力で逃げろ。俺達も全力でお前を捕まえてあらゆる手段を使ってお前を従わせる。――――どうやらこれがお前の運命らしい。」
運命というものはある。
エレンも、ヒストリアも……酷な星回りだと思うが、それでも――――それに甘んじるか、抗うかは自分で決めて進むしかない。――――俺達はヒストリアにその役をやらせる意志が固い。
それが嫌なら戦え、抗えと―――――示す。
「――――それが嫌なら戦え。俺を倒してみろ。」
ヒストリアを解放すると、大きく咳き込んで蹲った。
「―――――お前らは明日何をしてると思う?明日も飯を食ってると思うか?明日もベッドで十分な睡眠をとれると思っているか?………隣にいる奴が……明日も隣にいると思うか?」
俺の言葉に、皆それぞれ失った大切な奴らの顔が、頭をよぎっただろう。
「俺はそうは思わない。そして普通の奴は毎日そんなことを考えないだろうな。つまり俺は普通じゃない異常な奴だ……異常なものをあまりに多く見過ぎちまったせいだと思ってる。だが明日……ウォール・ローゼが突破され異常事態に陥った場合、俺は誰よりも迅速に対応し、戦える。明日からまたあの地獄が始まっても、だ。お前らも数々見て来たあの地獄が―――――明日からじゃない根拠はどこにもないんだからな。――――しかしだ。こんな毎日を早いとこなんとかしてぇのに……それを邪魔してくる奴がいる。俺はそんな奴らを皆殺しにする異常者の役を買って出ていい。俺なら巨人に食われる地獄より人が殺し合う地獄を選ぶ。……少なくとも人類全員が参加する必要はないからな。」
―――――そう、だから俺は遠ざけた。
あいつにとって最も残酷な、人間同士の殺し合いに参加しなくていいように。
この世で最も大事なあいつを。