第12章 壁外調査
「………アルル………。」
私はアルルの背中にそっと触れた。
「私、今回の壁外調査で、必ず活躍して見せる……!巨人をたくさん討伐して、認めてもらって、少しでもお給料をもらって……!お母さんの治療費を、なんとかできるように……!」
「私も……一緒に行って、それを手伝えたら、いいのに……。なにも、力になれなくて……。」
「違うよ。ナナは、私にはない力を持っているんだから。今はまだ、それを蓄える時期なの。それに……もし私が怪我をして帰って来ても、ナナが治してくれるんでしょ?」
アルルは、私にいつもの明るい微笑みを向けてくれた。
「うん、もちろん。」
私たちは再び、月を見上げた。
アルルは、今回が初めての壁外調査になる。その小さな肩に両親の命を背負って、戦おうとしている。
リンファは普段と変わらないように見えるが、時折、空を見上げて物思いにふける彼女の姿があった。
死ぬかもしれない。
壁外調査までの日々は、まるでそれぞれが覚悟を決めるための時間を過ごしているように見えた。