第133章 波瀾
「……順番だ。」
「…………?」
「こういう役には多分順番がある……役を降りても……誰かがすぐに代わりを演じはじめる。どうりでこの世からなくならねぇわけだ……。」
「…………。」
「がんばれよ………ハンジ………。」
――――それはまるで悪魔を心の奥に飼い始めた私に、その順番が回ってきたんだと言わんばかりの呪いの言葉だった。
「――――分隊長……?」
モブリットがかけてくれる言葉も聞かず、私は一人部屋に閉じこもった。
――――今までだって何度もあった。
こんな風に、やりきれない思いを抱えることも、苦しくなることも―――――。
けれど――――……
ドカッッッ!!!
私はその行き場のない怒りとやるせなさを込めて、側にあったテーブルと椅子を蹴り上げた。
こんな時いつも―――――そっと側に座って、私の目の奥を見つめてくれる濃紺の瞳も、私の震える手に重ねて温もりを分けてくれる小さな手も、今はここにない。
「――――ナナ……。」
情けなく縋るような声で、私はナナを呼んでいた。
――――側にいなくなって痛感する。
あの子がどれほど、エルヴィンを、リヴァイを、私を支えてくれていたのか。
「――――ハンジさん……?」
名を呼ばれてまさか、と振り返ると――――そこにはエレンが心配そうに私を見つめていた。
「どう……しました?」
「……いや、なんでもない。それよりエレンはどうしたの?」
「はい、実は―――――……。」