第133章 波瀾
「――――初めて人を殺したのが――――11歳の頃だ。」
「…………!」
俺の呟きに、ハンジが顔を上げた。
「それからはもう―――――数えちゃいない。それこそ――――もし巨人が本当に元人間だったのなら―――――数えきれないと言っていいほどだろうな。だが俺にとってそんなことは、どうでもいいことだ。地下街にいた時に殺したのは、殺らなければ殺られるからだ。そして今――――俺が殺すことで………多くの人間が死ななくてよくなるなら――――迷いも、恐怖も、後ろめたさもない。日常の中のひとつとして―――――殺せる。」
「………ああ、そうだ……君の強さは、身体的なものだけじゃ、なかったんだ。」
「――――俺みたいな奴は異常者と呼ぶんだろうな。自覚はある。」
「――――私もなるよ、異常者に――――、だって何かを捨てなければ―――――何も成しえないから。」
「――――異常者ですら癒してくれるナナは今いねぇぞ。」
「はは、そうだね……自分たちでなんとか、乗り越えなきゃね。」
俺とハンジはしばらくの沈黙の後、どちらともなくフ―――――っと息を長く吐いて、腹を決めた。
「――――さあ、再開だ。」
俺達はラルフを脅してまるで全ての情報を拷問の初期段階で吐いたように振る舞わせ―――――、わざとそれをサネスに聞かせた。
翌日、信じていた仲間に裏切られたという憤怒と、絶望を貼りつけたような顔で――――真実が語られた。
“レイス家が本当の王家だ”と―――――。