第133章 波瀾
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リーブスは上手くやった。
エレンとヒストリアを餌に中央憲兵を誘い出し――――俺達はニックを拷問して殺したのであろう中央憲兵サネスとラルフを捕らえた。
薄暗くじめじめとした地下室で――――絶えず痛みを与え続けて王とウォール教、レイス家について知っていることを吐かせる。
殴る蹴る、骨を折る、爪を剥がす――――拷問にしちゃあまだ軽い方だと思うが、兵舎の隅まで響き渡るようなサネスの叫び声が木霊する。
―――――ナナがここに、いなくて良かったと思う。あいつはきっと――――この声に耐えられねぇ。
そして意外だったのが――――サネスに拷問をかけてみても、こいつは喋らねぇ奴だとすぐに分かった。
自身の悦楽のために正義を笠に着て人を殺して来ただけの奴なら、爪の一枚でも剥がしゃ自分の身可愛さにすぐに吐くもんだが………王に心酔し、それを、この壁の平和を守るために手を汚して来たんだと信じて疑ってない。
こういう奴は“痛み”をいくら与えても―――――効かない。
恐らくニックもそうだったように。
「――――休憩しよう。」
口を割らず、それどころか『俺を嬲り殺せ』と言うサネスにハンジは拷問器具を置いた。
「困ったね……。なんか可哀想になっちゃったね。」
椅子に縛り付けたサネスを地下室に置いて俺達は一度別室に戻り、やり口を変えるためにハンジに話を持ち掛ける。
「――――おいハンジ。あいつはこのまま拷問を続けても喋らねぇぞ。」
「え……それはなんでそう思うの?まぁ……もう剥がせる爪も残っちゃいないけどさ……。」
「あいつを吐かせることができるのは、おそらく肉体的苦痛じゃねぇ。精神的絶望だ。――――もう一人のラルフを使う。」
「……ラルフを拷問しているところを見せるとか?!うわぁ、鬼だね……。」
「いや。サネスの王への忠誠心とやらは本物だ。心の底から心酔している。そして――――同志なら自分と同じはずだと思うだろう。同志のラルフが……己の身可愛さにペラペラ吐いたらどう思う?」
俺がハンジとモブリットを横目で見上げると、ぞくりと震えるような顔で2人は俺を見た。