第133章 波瀾
リヴァイ達にはエレンとヒストリアを狙ってくる中央憲兵を返り討ちにし、出来得るかぎりの情報を引き出せと指示をした。
同時に――――今後必要になるであろうレイス家の情報も集める。サッシュを筆頭に4名の班をレイス家領地に潜入させる。
そして私は―――――あの人に会いに行く。
ずっと見てきた……あの“生来の変人”を。
私は確信している。
ピクシス司令は今この時だけでなく、遥か先を――――人類の存亡についても見据えて何かを腹の奥底に持っていると。
この革命を成功させるうえで不可欠な人物だ。
それともう一人―――――、ザックレー総統。
いつだったか、ナナが言った。
ザックレー総統は何かの目的のために王政に従順なふりをしている気がすると。その言葉をきっかけに、私はザックレー総統の言動や表情、仕草などもくまなく観察していた。
――――ナナが言った事の意味がわかる。
確かにザックレー総統もまた、腹に一物抱えた人物だ。
トロスト区に発つ前に、馬に跨る。
左腕だけではまだ心もとないが、なんとか騎乗できる。馬の腹を小さく蹴って、駆け出すための合図を送る。その瞬間いつものクセで斜め後ろを振り返る。
――――そこに君はいないのに。
「――――ナナ、早く帰って来い。君がいないと、道中がとても―――――長く感じてしまう。」
同じ空を見上げていればいいと少しの感傷に浸りながら――――ピクシス司令と話をつけ、リヴァイ達と合流するためにトロスト区へ向かった。