第133章 波瀾
僅かな期待は見事に打ち砕かれた。
ナイルと別れて、招集されていた総統局に馳せ参じる時、私が疑いの目を向けている王政は、そこまで腐りきったものではないんじゃないかと――――……もしかしたら、私が父のことで躍起になって彼らの本質を歪めて見ているだけで―――――、本当は彼らがエレンやヒストリアを欲するのはただの暴挙ではなく、人類を守るうえで必要なことだからなのかもしれないと。
どこかで信じたかった。
父が死ななければならない理由はちゃんとあって―――――、尊い人類を守るために必要な犠牲であったと。
―――――だが違った。
王政の中心に巣食っていたのは……確かに保身と欲に塗れた愚物だった。
自分たちの権利と安寧を守るためなら、どんな犠牲も厭わない。そんな輩だ。
――――そこに、父の死の正当性は微塵も、なかった。
このままでは人類は滅びる。
外の世界からの襲撃に怯えた奴らの人垣、生贄となって数えきれないほどの市民が死んでいく。
そんなことはあってはならない。
この王政を打倒し、壁内人類の実権を握る。
人類の存亡を願うなら――――やらなくてはならない、革命を。
“本当にそうか?――――お前はそんな御大層なことを考えていないだろう?実のところ人類の繁栄など二の次で――――本当は、心の奥底は、自分の罪を償うために父の仮説を証明したいだけだ。”
頭の片隅でもう一人の俺が問う。
確かにそうだ。
だがもう乱されない、迷わない。隠さない。
俺の本当の目的も。
――――たった一人、彼女が―――――ナナが、俺を赦して受け入れてくれるから。
そんな彼女の夢を叶えるためにも、笑って生きて行ける世界を勝ち取るためにも人類の未来は明るくなくてはならない。
それこそがもう一つの俺の大きな―――――原動力だ。