第132章 仲合
「――――エルヴィンが王都から戻ってきたらトロスト区で落ち合う。トロスト区に必ず奴らは張ってる。俺達はこいつらを――――背後から刺そうとする奴らを駆除したい。さて――――どうする。アルミン、考えろ。」
「えっ、あ……!はい……っ……!替え玉を……わざと攫わせて……敵をつけて大元を叩く……のが、いいかと。」
「――――悪くない。そうするとあれか。エレンの替え玉は――――ジャン、お前か。」
「えっ!!俺、似てないっすよ……!」
ジャンが僅かに拒否するが、リヴァイ兵長の言うことには逆らえない。
「顔が似てるか似てないかはどうでもいい。お前以外に背格好が近い奴がいねぇ。やれ。――――ヒストリアの替え玉は………。」
リヴァイ兵長がミカサとサシャを一瞥して、『違うな』と目線をアルミンに移した。
「………え?!」
アルミンが察して自分を指さし、動揺する。
「やれ。」
「ぼ、僕……一応男……!」
「髪色と背格好が一番似てる。やれ。」
「はい………。」
確かに、サシャは背が高すぎるし――――ミカサはなにより白刃戦の大きな戦力だ。拘束させるには惜しい。アルミンがやるせなさそうな顔をしつつも了承し、こうして俺達の替え玉作戦が始まった。
「―――準備を急げ。なるべく早く出発する。夜のうちにトロスト区付近まで戻って――――夜が明けるまでにエレンとヒストリアはトロスト区の外れの宿で待機。俺達は夜が明けたらトロスト区の調査兵団支部に向かう。――――おそらくその道中で、仕掛けてくるだろう。」
バタバタと準備をして小屋をひっそりと抜け出す。
一時間ほど歩いたところで小屋の方を振り返ると、松明が小屋を囲んでゆっくりと動いているような明かりが見える。
――――所在がもう、ばれていた。
「あぶねぇ……今夜もあそこで寝てたら、俺達……どうなってたんだ……?」
コニーが呟いた。
「兵長、あれが中央憲兵ですか……?」
「さぁな……奴らが直接こんな現場まで出向くとは思えんが……俺も舐められたもんだ。――――おそらく下っ端か、ゴロツキでも雇ったか―――――。まぁどちらにせよ合流地点まで急ぐぞ。月が出てて助かった。」
俺達は夜道の中、輝く月の光を頼りにトロスト区を目指した。