第132章 仲合
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「――――姉さん、ほら。転ばないでね。」
「……過保護だよ、ロイ。」
家に戻って、一先ずは姉さんの部屋のベッドに連れて行く。
手を取って歩こうとする僕に対して、姉さんは小さく笑う。義兄さんと少し話ができたのだろう、朝兵団を発った時よりは、随分穏やかな顔をしている。けれど、依然として顔色は悪い。
姉さんがベッドに腰かけて窓の外を眺めている。
自由の翼を背負っていないその背中はとても小さく儚くて、背中からぎゅっと抱きしめる。
気になることがあるんだ。
項から肩にかけてを確かめたくて、姉さんのシャツの第一ボタンと第二ボタンを後ろから外そうとすると、姉さんはビクッと身体を震わせて怯えて――――僕の腕を振りほどこうと抵抗する。
「……やっ、なに……!」
その反応に、当たり前だけど姉さんは僕の蛮行をまだ赦していなくて、僕がまたあんなことをするかもしれないという恐怖を抱えながら、僕の横で笑ってるんだと理解した。
「―――……あぁ、ごめん。首筋と肩まわり、診せて。」
もう傷付けたくない、ただ家族として愛してるから大事にしたいだけなのに。僕はそれすら上手にできない。
それが情けなくて――――辛い。
「……うん……。」
姉さんが僕と同じ色の髪を片側に寄せて、シャツのボタンを外してはらりとシャツを落とし、その細い肩を少し露出させた。
「――――これ、どうしたの。この無数の痣や爪痕はなに……?まさか……変な奴になにか、されたんじゃ……ないだろうね……。」
「ううん。何もされてない。」
「――――じゃあ義兄さんが?愛情表現にしては激しすぎない?」
「エルヴィンがね、幻肢痛で錯乱した時に――――やり場のない痛みを、苦しみを受け止めたくてずっと抱き締めてた。そしたらエルヴィンは力が強いから。こんなになっちゃったけど、私は――――嬉しい。私の勲章なの。」
「………そう………。」