第132章 仲合
――――同刻、王都―――――――――――――
ナナと別れてから、招集された総当局に向かうその道中、ある人物と馬車に乗り合わせた。
憲兵団師団長であり、同期のナイルだ。
「今日はあのお綺麗な補佐官は一緒じゃないのか。」
「ああ。彼女はしばらく補佐を外れる。」
「痴話喧嘩か?気の強そうな女だもんな。――――もしくはお前に愛想を尽かしたか。」
「―――尽かされてないことを祈るよ。」
「は……。」
くだらない会話をしながら、馬車に揺られる。王都の中心部に差し掛かったその時、私たちの馬車の横を、年端もいかない少年たちの集団が走り抜けた。何かの荷物を持って走る彼らと、追う貴族の風体の男。
「少年窃盗団か?王都までこの状態とは……。」
ウォール・マリアが破られたあとも、何事もなかったようにその煌びやかさを維持していた王都にまで、ついに影が落ち始めている。ウォール・マリアの奪還の必要性を、この壁の中心でもまざまざと痛感するほど現状は深刻だ。
「―――どこも同じだ。取り締まるにしても収容施設はすでに溢れ返ってる。」
この街の治安を守る命を受けている男が、小さく零す。そう言えばナイルと2人で話をするのも久しぶりだ。
「この状況で憲兵である俺を連れ出してどういうつもりだ?一人じゃ王政招集もまともに務まらないか?俺は訓練兵時代の思い出話なんかに付き合う気はないぞ。」
「つれないなナイル。」
「――――お前はきっと早く逝っちまうもんだと思ってたんだがな……今は右腕をあの世に突っ込んだあたりか。それもガキの頃言ってた妄想を今も信じてるせいか?」
「ああ……その妄想は真実に変わりつつある。」
「………それは良かったな。」
ナイルは少々呆れた目線を向けた。
僅かだが場が温まったところで、本題を投げかける。