• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第131章 火蓋




「――――じゃあ、ね。」



俺の顔を見ずに馬車から降りようとするナナの腕を引いて、その腕に抱き留めた。

きつく、その折れそうな華奢な身体を背中から抱く。

ナナの顔は、見えないままだ。





「――――放して……?」



「………もう少しだけ。」



「……いやだ、放して……。」



「――――無理だ、すまない。」



「――――離れられなく……っ………なる………!」





ナナの声が震える。その肩も。





「………ちゃんと、静養、する、から……、どうか……一つだけ、許可、してください……エルヴィン、団長……。」



「――――なんだ。」



「ウォール・マリア奪還のその時は――――どんな状態であっても、連れて行ってください………。エレンの家の地下室に眠る、外の世界への鍵が開く時は―――――、私が、行かなきゃならない……。これは私の――――命を賭けても、やらなきゃいけないこと、なんです……!」





絞り出すように、掠れた声を詰まらせながらナナは言った。

君の覚悟なのか。

例えそこで死ぬとしても成し遂げるべきものがあるんだと、ナナ・オーウェンズという人間が命を賭けるほどの覚悟を――――しているんだな。





「――――わかった。約束だ。できる限り万全の体調で来い。しかも、そう遠くないぞ。短期間で集中して身体をちゃんと休めなさい。」



「――――はい………。」



「――――俺も、一つ許可して欲しい。ナナ。」



「………はい……?」



「こっちを向いて。」





ナナはゆっくりと、少し気まずそうに―――――体を俺のほうに向けて、赤く充血した目で俺を見上げた。



左手で頭を撫でてからその手を頬に降ろし、親指で唇に触れる。


/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp