第131章 火蓋
「――――一刻も早くエレンの力を試したい。ぐずぐずしていられない!早く行動しないと――――、だけど、エレンを手に入れようとする中央の「なにか」。その切迫度が明らかに変わってきてる。これだけ壁の中が不安定な時期に―――――私たちの領域に土足で踏み込んで――――民間人を殺した。これは普通に考えれば、ライナー達のような“外から来た敵”が中央にも潜んでいると考えられる。壁の外ばかり睨んでいる間に、背後から刺されて致命傷になるなんてことが、起きかねない……!」
「―――それで?俺達は大人しくお茶会でもやってろって言い出す気か?」
ハンジさんに向かって、リヴァイ兵長が問う。
――――リヴァイ兵長は反対なのか。
「……今だけ頼むよ。」
「今だけだと?それは違う。逆だ。時間が経てば奴らが諦めるとでも思ってんのか?ここはいずれ見つかる。逃げてるだけじゃ時間が経つほど追いつめられる。ハンジ……普段ならお前は頭のキレる奴だ。だがニックを殺されたことで逃げ腰になっちまってる。」
「――――………。」
「ニック、あいつはただのクソ野郎というわけではなかった。頭も悪くねぇ、そして守るものがあると言ってやがった。――――ニックが口を割らなかった可能性が高いとなれば、中央の“何か”は俺達がレイス家を注視してるってとこまで警戒してない……かもしれん。」
――――女型と闘った時も思ったけど……リヴァイ兵長の怖いところ、凄いところは―――――……その強さだけじゃない。
怖いほどに冷静だ。
ハンジさんが取り乱すようなこんな状況でさえ。
冷静に最善の策を瞬時に導く。
――――何にも、誰にも乱されない。
これが、人類最強――――……。
「まぁ……俺に言わせりゃ今後の方針は二つだ。背後から刺される前に外へ行くか。背後から刺す奴を駆除して外へ行くか。お前はどっちだハンジ?刺される前に行く方か?」
リヴァイ兵長の言葉に、ハンジさんが辛そうな顔をして俯いたあと――――、腹を括ったように、俺達に今後を示して見せた。
「両方だ。どっちも同時に進めよう。」
「――――まぁ、エルヴィンならそう言うだろうな………。」