第131章 火蓋
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ハンジさんの口から聞いたその事実は、にわかには信じがたかったけれど――――、これまでの数々の出来事を振り返れば、彼らならやるだろうと、思わざるを得なかった。
そして――――そこに今もいるの?
………アーチさん……。
「――――ニック司祭が拷問にかけられたのは、調査兵団にウォール教の持ちうる情報をどこまで喋ったか、ということを聞き出すためか。おそらくエレンとヒストリアを探している。――――殺されるまでに至ったと言うことは、――――話さなかったのか……。いや、話したとしても口封じに――――奴らなら殺すだろうな。中央憲兵にどこまでの情報が伝わったかは測れない。」
エルヴィン団長が小さく言葉を漏らす。
「―――ハンジさん、今エレンとヒストリアは……?!」
「――――……人里離れた山小屋に隔離してるよ…。104期と、精鋭の護衛と共に……リヴァイもいるはずだ。」
「ハンジ、今すぐ行ってこの状況をリヴァイにも伝えろ。――――私は王都からの招集が来ている。応じなければならない。」
「――――わかった。……そこからは……?」
「――――お前に任せる。必要な伝達は早馬で飛ばせ。」
「………了、解……。」
ハンジさんがどこか歯切れの悪い返事をするのは、動揺しているからだ。
自分と関わった民間人が無残に殺された。
乱れるのも無理はない。
私はそっとハンジさんの背中に手を添えた。
エルヴィン団長はそれを見て、私の事をハンジさんにも話した。
「―――それから、ナナはしばらく王都の実家で静養させる。体調がおもわしくない。」
「――――えっ……?」
ハンジさんはとても驚いた顔をして、私を見つめる。眉を下げて、目を細めながら――――私の頭を小さく撫でてくれた。