第131章 火蓋
明け方にようやく眠りについて、明朝、バタバタとした足音で目覚めた。
「――――エルヴィン団長、お目覚めですか?!」
モブリットの声だ。
「ああ、どうした?」
「大変です、ニック司祭が―――――!!」
扉の向こうから、ひどく焦った様子でモブリットがある報告をした。
「…………?」
トロスト区の兵舎で秘密裏に匿っていたニック司祭が―――――殺された。私の代わりにハンジが現場に急ぎ、その後報告にやってきたハンジは――――得も言われぬ怒りと自責に満ちていた。
「―――で、どうだった。」
「―――中央第一憲兵のジェル・サネス――――、ともう1人のラルフとか言う男。強盗に見せかけたつまらない工作をしてたけど――――、ニックはあの2人に……拷問のうえ、殺されたんだ…!」
「――――………。」
エレンの存在と壁の中のあの巨人の存在が明るみになってから――――、何か良くないものが急激に蠢き始めた。
巨人の力の何かの重大な情報を握っている、王政の中央に見え隠れする何か―――――。
ざわざわと這い上がる嫌な感覚の中、コンコン、と扉が鳴って――――彼女の声がした。
「――――エルヴィン……?」
「ナナ。」
返事をすると、まるで俺の機嫌を伺うかのように小さく開いた扉の隙間から、ナナが顔を出した。
―――よく眠れたのか、昨晩よりは幾分顔色が良いようだ。
「………なにか、あった……?……あ、ハンジさんも……!」
「ナナ……。」
「どうか、したんですか……?ハンジさん……とても……辛そうに見えます……。」
「――――ニック司祭が、殺された。中央第一憲兵に。」
「―――――!!」