第11章 交錯
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壁の崩壊から半年が過ぎ、壁内の様子はいよいよ深刻化していた。住居・食料・医療、全てが不足し王政への民の怒りは爆発寸前だ。このままでは、いずれ壁内で戦争が起こるだろう。
ある日、王都に招集された俺たちは、驚くべき王政の方針を提示された。半年後、ウォールマリアへ奪還のための大規模な遠征を行うというのだ。
もちろん調査兵団だけではなく、一般市民から兵を招集し、巨人討伐に当たらせるというものだった。その人数は、およそ二十五万人を計画しているという。エルヴィンとハンジは絶句した。
「ねぇ……あの話、正気なの………?」
「………いたって、真面目なようだったな。」
王都で夜を明かすことになっていた俺達は、酒場で酒を交わしていた。だが、その空気は重苦しいに尽きるものだった。
「兵団の教官を当てて、即席で訓練するとはいえ……今から兵を招集、それから軍備を整えて訓練を開始するまで、早くても二ヶ月はかかるだろう。……半年足らずの訓練で、しかも立体機動はもちろん馬や軍備もままならない状況で一般人を巨人討伐に向かわせるなんて、みすみす食わせにいくようなものだ……!」
ハンジがいつになく怒りを露わにする。
「………奪還作戦、とは名ばかりの………口減らしというところか。半年後……この国が内側から崩壊する、ぎりぎりの時期だとも言える。」
「………汚ねぇ豚どもの考えそうなことだ。己の身を守るために、一般人を犠牲にするとはな。」
「……今回の壁外調査は、そこに向けてのウォール・マリア内の調査になるな。……リヴァイ、やはりお前の言う通り、ナナは今回の調査には出さないでおこう。医療班の編成を試したくとも、半年後の大規模遠征の結果を以てみないことには、調査兵団の行く末すらままならない状況だからな。」
「ああ………。」