第11章 交錯
「……ナナ、残念がるだろうね。あんなに一生懸命、立体機動も練習したのに。」
「……状況が状況だ。致し方ないだろう。」
「ナナには私から説明しよう。いいか、リヴァイ。」
「……そうしてくれ。あいつは今、俺の言う事に耳を貸さねぇからな。」
俺が酒を煽ったのを見て、ハンジが楽しそうに俺の顔を覗き込む。
「えぇ~、何かあったの??ねぇねぇ。」
「うるせぇ、クソメガネ。」
「……それはそうと、あの一件以来、ナナが急に“女”っぽくなったと思わない?」
「あ?」
「いや、ついこの間までは、賢くて芯も強いんだけど、ちょっと世間とはズレてる“少女”って感じだったんだけど……なんだかあの一件からは、女の強かさとか、魅力が増して“女”に成長しようとしてる気がしてさ…こないだなんか、女の私でもキュンとしちゃうことがあって。」
「………言われてみればそうだな、より強く、美しくなったように感じる。」
エルヴィンの同意の言葉に、少し苛立つ。
「ふん………俺には聞き分けのねぇガキに見えるがな。」
「またビクターみたいな輩が出ないか、私は気が気じゃないよ。……ねぇリヴァイ、守って、あげてね。」
「…………。」
ハンジの言葉が枷のように感じるのは、俺の本心が「守る」と同等に「壊してしまいたい」と鳴いているからなのだろうか。
俺の複雑な心境を見透かすように、エルヴィンが口を開く。
「……自信がないなら、私がその役目を引き受けるが?」
「………………。」
「………ちょっとエルヴィン、あの子をずっと守って来たのはリヴァイなんだよ。そんなこと、リヴァイが頼むはずが………。」
「いや…………そうしてくれ。」
「え?」
「あいつを、兵士長補佐から外してくれ。」