第11章 交錯
「エルヴィン団長を侮辱しないで……!」
「……………。」
「エルヴィン団長は、私に……いえ、部下に手を出すなんてこと、なさいません!」
「………そうだな、あいつは綺麗でよく出来た人間だ。俺と違って。」
「……そんなことないって、言って欲しいんですか。」
私の言葉に、一瞬リヴァイさんの瞳が揺れた。
「………えらく生意気になったもんだな。」
私の両手はいとも簡単に彼の片手で頭上に押さえつけられ、両手で庇っていた開かれたブラウスがはだけて身体が晒される。
「………気が変わった。乞え。懇願するなら、抱いてやる。」
こんなリヴァイさんは知らない。
驚くほど冷たい声と目で、私を芯から冷やしていくようだった。きっと、アウラさんが見た彼は、こんな様子だったのかもしれない。
私は他の誰かよりもほんの少しだけ、彼に大切にされていると思っていた。でも、それは過信だったようだ。それとも、私の愚鈍さがそうさせてしまったのだろうか。
いずれにしても、こんなリヴァイさんは、嫌いだ。
私は、リヴァイさんを睨み付けて言った。
「………気が変わりました。願い下げです………!」
「どこまでも………可愛げがねぇな……っ……!」
リヴァイさんは、私の唇に獰猛に食いついた。
その唇を、思い切り噛む。いつかのそれと同じ感触が蘇る。
「……ちっ…………!」
「………なんで………っ………!」
あの忌まわしい記憶を塗り替えてくれたのは、リヴァイさんの口づけだった。それなのに、今度はビクターさんと同じような事をして、また私の暗い記憶を呼び起こす。
私は隙を見てドアを開け、リヴァイさんの執務室から飛び出した。
彼は、追ってこなかった。