第129章 苦悶③
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想像通りの胸糞悪ぃ展開になってきやがった。
俺は人を救うために―――――人を切り刻んで、削ぎまくっていたのか。
ナナがとても苦しそうな表情で俺を見つめて、何かを言いかけた。『あなたは悪くない』と、そういった類の言葉をかけようとしたのだろう。
クソみてぇな話だが、真実に一歩近づく情報であることに変わりはない。ここからどう動かすのか、エルヴィンの判断を聞くために問いかける。
「なぁ、エルヴィン――――……。」
その表情を見て、唖然とした。
―――――笑ってやがる。
何が、可笑しい。
自分が殺して来た者に対しての罪悪感や、どこにも向かせられない苛立ちを募らせるなら分かる。が、エルヴィンは確かに喜々として口角を上げた。好奇心を満たされて喜ぶような、ガキみてぇな面で。
「お前……何を……笑ってやがる。」
「…………。」
一瞬エルヴィンは、小さくしまった、とでも言いたそうに表情を無に戻し――――、何事も無かったかのように取り繕った。
「あぁ……何でもないさ。」
「……気持ちの悪い奴め……。」
「子供の頃からよくそう言われたよ。」
「――――好奇心は猫をも殺すって言葉があるのを知ってるかよ。」
ピクシスがいる。
ここでナナとエルヴィンが外の世界の事を追ってる話はできない。だが――――さっきのエルヴィンの表情は危険だ。この曲者のじじぃに何か勘付かれる可能性もある。
てめぇのその顔は――――色んな意味で不適切だと釘を刺す。
「あぁ……そうだな、気をつけよう。それで――――、エレンとヒストリアは今どこに?」
「それに関しても進めてるよ。まず2人を安全な場所に隠した。この混乱が収まるまで大人しくしてるよ。」
ハンジの言ったとおり、エレンとクリスタを含む104期7名を俺の新しい班として編成し、人里離れた建屋に身を隠させた。そこでエレンの硬質化や巨人の力を使いこなすための実験と訓練をしながら――――クリスタから情報を辿り、巨人の謎について詳しい人間を探り出す。