第129章 苦悶③
「討伐した巨人の個体数と、ラガコ村の住人の数が一致した。」
「――――………。」
「それでね、ナナ。私たちが考えなくちゃならないことは山ほどあるんだ。どうやって巨人化した?誰が?何のために?そんなことができるなら、壁内のどこで住民を巨人化させられてもおかしくない。どうやって防ぐ?今何をすべき?」
「……………。」
「――――考える事をやめちゃいけないのはわかってる。だけど……。私が、私が今まで実験で殺して、拷問していたのは―――――……!」
ハンジさんが言葉を詰まらせたのを聞いて、体が勝手に動く。がたん、と椅子を跳ね除けて、ハンジさんをぎゅっと抱きしめる。
過去の自分の行いすら、過ちだったと責めてしまう。
「――――ナナ……。」
私の腕を振りほどかず、私の腕に手を添えてきゅ、とハンジさんは力を込めて、ぽつりと呟いた。
「――――知らなかった、で、許されるのかな………。私は――――人をいたぶって喜んでいたのか………。」
「――――私も同じです。残酷な実験を提案して、一緒に執り行いました。でも、でも………っ……。私たちが未知を解き明かすことをしなければ、全てを諦めていたら、巨人に引きちぎられて食われた――――私たちの愛する人たちの魂は、どこに行けば良いのでしょう……。」
「――――………。」
「許されないかも、しれないです。私たちが解剖して殺した巨人にも――――、もともと家族が、愛する人がいたのかもしれない。だから……っ……許してなんて言えないけど……、でも、誰かが解き明かして終わらせなきゃ……っ……この悪夢から、醒めなくちゃ、いけない、です……!」
「――――………そう、だね……。」
なぜこんなにうまく言葉が出て来ないのだろう。
そんなことないと、私たちは悪くないなんて、言えなかった。でもこれからも、なんとかしてこの残酷な世界からの解放を求めて進めていくしかない。
死んで行った仲間の命も、死んで行った元人間だった巨人たちの命も、投げ出してしまうことが最も罪深いはずだから。