第129章 苦悶③
「――――ナナ、現状……何が起こっている?」
「――――はい、実は……。」
ナナは一通り俺が目覚めるまでの1週間の出来事を簡単に話した。ハンジとコニーを中心とした小隊がラガコ村の調査に行って、さきほど帰着したようだということ、そして――――エレンが話した、ユミルとの会話で『巨人を発生させた』という謎の言葉。王都の地下街での暴動。
「―――そうか。」
「―――ちょうど今日、兵団の報告により王政がウォール・ローゼ内に巨人はおらず、安全が確認できたためウォール・ローゼの住人が避難先から戻れることになりました。」
「…………。」
「正直、またいつ巨人は現れても不思議じゃないとは思いますが……これはローゼに限ったことではないので……仕方、ないですね……。」
「………そうだな。」
「随分顔色もいい。身体が辛くないようなら、明日リヴァイ兵士長やハンジさんと面会されますか?」
「ああ。」
「伝えておきます。では明日に備えて……食事をお持ちするので、食べて――――眠ってください。」
しばらくしてナナは食事を持って来て、右手が使えない俺にかいがいしく世話を焼いてくれる。
が、ナナの顔色が悪い。どうにも辛そうな顔をする。
「――――どうした、ナナ。どこか痛いのか?」
「いえ……。食べる、ことが……怖くて。」
「食べることが怖い?」
「でも大丈夫です……。少しはましになってきているので、ご心配なく。」
作られた笑顔が無理をしていると物語っている。
心の奥底を蝕む何かが、徐々に彼女を内側から侵食していっているのか。――――気を付けておかないと。
その場ではそれ以上の追及はせず、ナナの言葉を信じてしばらく様子を見ることにした。