第128章 苦悶②
「でも実は―――――、私も酷い顔だから、見られたくない。」
「君はいつも綺麗だ。」
「うそ。きっと目が真っ赤で腫れてる……。」
「それも可愛いんだ。俺の為に泣いてるぐしゃぐしゃの顔もたまらない。」
「………意地悪。」
「――――ナナ。」
「………ん………?」
「――――もう少し、こうして抱いていてくれるか?」
「――――あなたが望むなら、ずっとこうしてる……。」
ナナは一言そう零して――――――その腕の中の俺を慈しむように、癒すように、包み込んでくれた。
すぐに目の前がかすんでくる。
意識がまたぼんやりとしだした俺に気付いたのか、心配そうに顔を覗き込む。
「――――眠ろう、もう少し。」
「……離したくない……。」
「――――じゃあ、抱いてる。だから眠って……?」
ナナはベッドに横たわって両手で俺の首と頭を優しくその胸に引き寄せて――――俺は癒しの女神に抱かれるようにして、甘く深い眠りに落ちて行った。
不思議とあの恐ろしいほどの痛みも悪夢も現れそうにない。
ただただ幸せな夢へと誘われていく。