第128章 苦悶②
「――――あいつらの故郷は、ウォール・マリアの南東の山奥だって言ってた………だけど――――本当は、もっと壁の、外から――――……。だとしたら、俺達が目指す壁の外は――――敵、だらけなのか……?」
「………どう、だろう……。」
「――――それに、“さる”が、壁内に巨人を発生させたって――――……。」
「『発生させた』……?」
やっぱりそうだ。
『巨人を引きこんだ』と『発生させた』はまるで違う。引きこんだと言うなら、元々いたものを移動させたことになるけれど――――、発生させた、というのは、そこにいなかった巨人を、生み出したということだ。
壁も破られていない事実から見ても、『発生させた』というのはおそらく事実。じゃあどこから……?
エレンたちが何もないところから巨人の身体を出現させるように、無尽蔵に無から作れる?
それとも―――――何かを、巨人化させることができる?
――――何か、なんて―――――一つしかない。
「―――う、……っ……。」
そのあまりに残酷で恐ろしい想像に、吐き気がする。
ハンジさんと巨人の痛覚実験をしている時にもよぎったんだ。“この巨人たちが、誰かの愛する人である可能性も0じゃない”って。
「ナナ!!大丈夫か……?」
「………ん、はぁ…………、ご、めん……ね……、大、丈夫………っ………。」
エレンが私の背中をそっと撫でてくれる。ふと、その手が止まって――――、私の手を、ぐっと掴んだ。
「――――また痩せたな。」
「……ちょっと、激務だったからね。みんなそうでしょ。すぐ元に戻るよ。」
その大きな瞳を見ることが出来ず、はぐらかすようにしてエレンの手を制そうとした。
「――――ナナ。」
「放して、エレン……。」
「…………。」
エレンの目が、昏い。
信じていた仲間が裏切って、自分の力を信じきれなくて。
周りからの重責もある。
たった15歳の少年には、辛いだろう。