第128章 苦悶②
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随分体調もいい。
――――まだ、万全とは言えないけど。
リヴァイさんが買って来てくれたお菓子の中には、とても可愛らしい猫の形をしたクッキーがあって……彼はどんな表情でこれを買ってくれたんだろうと想像すると、ふっと笑みがこぼれる。
そういえばよく、私のことを猫に例えていたっけ。
あの執務室のソファで、彼の膝に頭を預けて身体を丸めて眠る。時折寝ぼけ眼で見上げると―――――嘘のように優しい目で私を見下ろして、髪を撫でてくれる。
毎日多くの人が死にゆくこの毎日の中、もうあんな日々は訪れることはないのかもしれないと思うと―――――その思い出が愛しくて、あまりに鮮明で鮮やかに彩られていて―――――
涙が出る。
その時、こんこん、と扉が鳴った。慌てて涙を拭って返事をする。
「はい、どうぞ。」
扉を開けた先にいたのは――――エレンだ。こちらをちらりと覗きこんでいる。
「エレン。どうしたの?」
「………体調、大丈夫かよ。」
「うん、平気……ありがとう。……何か話しに来てくれたの?」
「ああ………。」
エレンは扉を閉めて私のベッドの側に寄った。
脇の椅子に腰かけると、目を伏せたたまま気まずそうな表情をしている。その顔は昔、カルラさんに叱られていた頃みたいで――――、懐かしくなる。
「どうしたの?何か辛いの……?」
「――――色んなことが、ありすぎて………。」
「………そうだね………。」
「――――ユミルが、言ったんだ……。ベルトルトとライナーを倒して終わりだと思っているなら、大きな間違いだ、って………。」
「…………。」
私の中の残酷な想像の輪郭がなぞられ、濃くなっていく。