第128章 苦悶②
「―――――何を泣く?」
「………ごめ、なさい……。」
「…………。」
「――――なんで、あなたの前では――――……ちっとも、強く、いられないのでしょう……。」
「――――泣かない事を強いと言っているのなら、違うだろ。」
「…………。」
「――――泣いても、折れても、ボロボロになってもまた前を向くお前は弱くない。」
「…………。」
「まぁ俺の本心は………この機に心も折れちまって、実家にでも帰って穏やかに暮らしてくれりゃいいのになとは思っているがな。」
「……ふふ………。過保護ですね……。」
「そうだな。過保護ついでだ。」
リヴァイさんはキラキラとした砂糖がまぶされた小さなクッキーをつまんで、私の口元に差し出した。
小さく口を開けると、それを私の口に運ぶ。
ふに、と指が唇に触れるその感触に、心臓が騒ぎ立てる。リヴァイさんは砂糖がついたその甘い指を、ぺろりと舐めた。
いちいち色気を纏って――――、“ただの上官と部下じゃない”ということを、わからせようとしてくる。
「………わざと、ですか……?」
「あ?」
「……いえ、なんでも、ないです……。」
「――――俺は行く。お前の処置があったおかげで、ハンジが随分良くなった。これからのことを相談して、またお前の耳にも入れる。今の間にゆっくり養生しておけよ。」
「はい……!」
リヴァイさんはいつものように、私の髪をくしゃ、と撫でたその手を頬に滑らせ、さらりと頬を撫でて―――――僅かな熱の余韻を残して、部屋を去った。