第127章 苦悶
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エルヴィンが重傷とはなかなかの損害だ。
ここ数日は面会謝絶で、ナナが付きっ切りで看病していたが――――そろそろ様子を見に行くか、とエルヴィンが静養する部屋に足を運んだ。
扉を開ける前に、ガタン、と大きな音がした。
――――おいおい、まさかもう回復してナナを押し倒してんじゃねぇだろうな、あのエロ団長。
一瞬扉を開けるのを躊躇ったが、大事だといけないからな、と思い直して扉を開ける。
「――――おい、エルヴィン……。」
目をやったベッドの先には、エルヴィンは静かに寝息を立てている。
じゃあさっきの音は―――――?
と床に目をやると、ベッドの向こう側の床に白銀の髪が波打っているのが見えた。
「―――――ナナ!!」
駆け寄ると、エルヴィンよりも真っ青な顔をして――――意識を失ったナナが、倒れていた。
抱き上げて別の部屋のベッドに運び、医師を呼んだ。
「――――過労、ですね。」
俺はナナのこれまでの様子を見てない。
行動をほぼ共にしていたサッシュを呼んで、状況を説明させる。医師はサッシュからナナのここ数日間の働きを聞いて、ありえないといった顔で呆れた。
そりゃそうだろうな。
俺が知るだけでも、女型と交戦した壁外調査以降、ろくに休まずに超長距離移動をした挙句、ほぼ一睡もせずに壁上での兵士の指揮をとっていたと聞いた。
さらにエルヴィンの重症で――――トロスト区に戻ってからも休むことなくエルヴィンの看病をしていた。
抱き上げた時の軽さに驚いた。
何か病だったり、あいつの身体を蝕むものがあるんじゃないかとすら思えるほどだ。