第127章 苦悶
次の日もまた、ずっと側でベッドに横たわるエルヴィンに小さく話しかけ続けた。
「――――ねぇエルヴィン、壁外では何を見た……?真実に近づくためのヒントを――――エルヴィンのことだから、沢山見つけたんでしょう……?教えてね、私に。――――目を、覚ましてね………いつまでも待ってるから……。」
エルヴィンが好きだと言ってくれた、歌を歌う。
神の福音の歌、愛の歌、夢の歌………早くその目を開けて欲しいという気持ちもあるけれど、ここまでこの人は走り続けて来た。
心にも体にも鞭を打って。
だから―――――少しくらい休ませてあげたいとも、思ったんだ。
「―――エレンを助けてくれて、ありがとう……。」
柔らかな陽光が窓から射して、乾いた風がカーテンを揺らす。まるで――――数日前のことが嘘のように平和に見える街並みを窓から見下ろしていると、ふと手紙の配達員の姿が目に留まった。
ああそうだ………こうしている間にもエルヴィン団長への書簡や手紙はひっきりなしに届く。急ぎのものがないかどうか全て目を通して、全て頭に入れておかなきゃ。
エルヴィン団長が目を覚ました時に、情報を整理して無駄なく伝えるのも私の仕事だ。
私は手紙を取りに行こうと、ベッド脇の椅子から立ち上がった。
その瞬間。
「―――手紙、取りに行かなきゃ……。…あ…………?」
目の前が歪んで回り出した。
「――――………?」
やがて視界は極彩色に彩られて点滅を始め―――――渦を巻くように混ざり合いながら、強制的に瞼が閉じられた。