第126章 代償②
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日が沈もうとするその時、不思議なことが起きた。
壁周りに貼りついていた巨人たちが―――――一斉に、何かに操られるように、巨大樹の森の方向へ駆けて行った。
「――――なに……?」
もしあの数でみんなを襲ったら―――――勝ち目なんて、ない。
震える足をなんとか押さえつけてその場に立っていた。
――――私は今、エルヴィン団長の代わりにここにいる。みっともなく動揺なんて見せない。
「――――馬はあと……何頭いますか?」
「あ、っと……8頭です。」
「5頭はリフトで下してください。援護班は壁際だけでなく、平地に出てもらうかもしれない。もしかしたら―――――、複数体の巨人に追われる形で戻ってくるかもしれない。援護班から精鋭5名を選抜の上、騎乗して戦闘準備をお願いします!」
「はい!!」
あれだけの数の巨人の中――――本当に無事で帰れるのだろうか。
太陽が沈み明かりが消えゆくのと共に、私の希望が薄く小さく消え入ってしまいそうだ。
――――そんな中、待ち焦がれた彼らの帰還する姿が目に飛び込んできた。
「―――――エルヴィン……!」
補佐官ではない私が、ただのナナが―――――愛しい人の存命を願うように、思わずその名を呼んだ。
そしてはっきりと見つけた。
馬に跨って、こちらに駆けてくる姿を。
「――――帰って、来た……!!援護班!!!戦闘準備!!!」
はやる心臓を押さえながら、リフト下降の指示を出す。
どうやら巨人の追跡もなさそうだ。
順次引き上げて―――――と考えていると、壁の下からフィオが私を呼んだ。