第126章 代償②
「―――――エルヴィン団長!!!騎乗できますか!!」
フィオが馬を連れて来た。
「――――助かる。」
目線を上げたその時―――――フィオの背後から巨人が彼女を喰らおうと、手を伸ばした。
「!!!」
が、その一瞬で何かに操作されたように――――、巨人がぐるりと向きを変えて、走り出した。見渡せば、他の巨人も全てが同じ場所に駆けていく。
「………なんだ…?!」
遠くで、エレンが叫んだ声が聞こえた。
「来るんじゃねぇ!!てめえら!!クソ!!!ぶっ殺してやる!!!」
そしてその言葉を合図に―――――全ての巨人が、鎧の巨人に標的を変えた。
まるで……エレンがそう、指示したように。
だがこの機を逃せばもう撤退はあり得ない。
「この機を逃すな!!!撤退せよ!!!」
こうして―――――数えるほどの人数が、ようやく壁まで辿り着いた。
「―――――ナナ……。」
こんなに遠くからでも、暗がりであっても見つけられる。
君が―――――俺の帰りを待っている。
その風に髪をなびかせて、俺を呼んでいる。
「……今、戻る………。」
今にも意識を失いそうだ。
死というものは、この先にあるのか?
だとしたら―――――君に抱かれて死ぬのなら悪くない。
俺が君を抱き締めるには腕が足りなくなってしまったから―――――、
君に、抱かれたい。