第126章 代償②
「―――――っぐ……っ…あぁあっ……!!」
―――――骨を断つのに苦労する。
ぎり、ぎり、と何度も力を込めてようやく右腕を切り離し、巨人の口から逃れた。
すぐに馬を呼んで飛び乗り、ミカサ達を追う。
ここで必ず奪い返す。
ここぞと言う時の博打は、負けたことがないんだ、私は。
止血していてもドクドクと流れる血と、その脈動に生きていることを感じながら――――――アンカーを放って、ベルトルトに刃の標的を定めた。
アルミンが――――何やらベルトルトに話しかけているのが見えた。
心理的な揺動だろう。
彼なら上手くやるに違いない。
一瞬の隙が、必ずできる。そこしか勝機はない。
「――――悪魔の末裔が!!!!根絶やしにしてやる!!!!」
ベルトルトが我を忘れて揺動に乗った。
取り乱した奴は私に気付いていない。
足元から渾身のひと振りを、その胸元目がけて放つ。
エレンを拘束していた紐を切り裂き、エレンが落下するのがゆっくりと―――――まるで時が止まったかのように見えた。――――頼む、ミカサ。君なら必ずエレンを守るだろう?
その想像通り、ミカサがすかさずエレンを抱き留めた。
これ以上の長居は不要だ。
エレンを取り戻したのなら、一刻も早くこの場から離れて帰還を目指す。
「総員撤退!!!!!」
私の指示とともに、生き残った兵士達が一挙に撤退する。
だが―――――奴らも命がけだ。次の策を講じてきた。
「う、わぁあああああ!!!」
「なんだ?!巨人が、降って……っ!!」
足止めする気か。
巨人を―――――投げて寄越すとは。