第126章 代償②
「進め!!!」
右腕の刃をかざし、更に突撃の指示を出す。
―――――とその時、右手前方の木の陰から―――――地面に伏していたのか、急に巨人が飛び出して来た。
左手で何とか瞬間的に手綱を引いて左手に避けた、が―――――右腕に食いつかれて、私の身体は宙に浮いた。
「うわぁぁあああああ!!!エルヴィン団長ッ!!!!」
皆が怯んだ。
視線を私に捕われてはいけない。
君たちの目指す目標はただ一つ―――――
「進め!!!!」
力の限り叫ぶ。
「エレンはすぐそこだ!!!進め!!!!」
私の言葉に、同志たちが振り向くのを止めた。
――――それでいい。
前だけを見て、エレンを奪い返すことだけを考えろ。
――――さて、なかなか離してくれないこの巨人を、どうしたものか。
「――――熱烈、だな……。そんなに欲しければ――――腕の一本くらい、くれてやる。」
脳裏に―――――あの日のショウ隊長の姿が過った。
あの日思ったんだ、俺は―――――彼のように強く、なりたいと。
右手に持ったブレードの束から伸びるワイヤーを右腕に巻き付けて、強く縛る。――――止血しない事には、失血死の可能性もありうる。
「――――ナナ、君を抱く腕を失うが――――、赦してくれ。」
こんな時にまでナナにことわる自分が可笑しくて、ふっと笑みを零して――――――
左手に握った刃で、渾身の力を込めて振り抜く。
私は行く。
それが阻まれるならば、自らその腕を―――――
断つ。