第126章 代償②
ふと、自分の思考に驚く。
私が今ここで死ぬということは、ナナを置いて行くということだ。
ナナが泣いて縋った約束を破って――――、置き去りにしていく。
けれど、私の脳裏には確かにあいつの顔が浮かんだ。
――――リヴァイ。
あいつが生きている。
それなら、私は今ここで命を賭けられる。
――――例え死んでも――――あいつになら、ナナを託せる。
……いや、元々あいつが守ると決めた女性だったな。
そう思ったから、なのか。
それとも――――ナナを泣かせても、自分が死んで……夢の実現とナナとの未来を諦めるとしても――――尊い人類の未来を優先する、育て上げてきた調査兵団団長エルヴィン・スミスの人格が、その判断をさせているのか。
ナナを手に入れてから随分と本来の俺自身が強くその片鱗を見せていたが――――どうやら、調査兵団団長の私も、落ちぶれてはいないらしい。
邪念ないその言葉で、誇りを込めた敬礼と共に―――――迷いなく兵士を鼓舞する。
「エレンを奪い返し即帰還するぞ!!心臓を捧げよ!!!!」
私の言葉にいち早く調査兵団の面子が反応し、突撃を開始した。
鎧は巨人たちの猛襲に遭い、それを切り抜けるために攻撃せざるをえず、ベルトルトとエレンを庇っていた手を首元から離した。
――――今なら、エレンを取り返せる。