第126章 代償②
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――――よく足止めしてくれた。
ミカサ、アルミン、サッシュ。
おかげで捕らえた。
正面から回り込み――――引き連れて来た巨人に、ライナーを襲わせる。
人間か人間が中身の巨人か。
知性のないこの巨人たちが、どちらを先に食おうと襲い掛かるのか―――――見物だな。
私が捕食対象をもし選ぶとするなら――――小さくてすばしっこい獲物よりも、図体がでかくてのろまな獲物を狙うがな。
サッシュの指示が飛んだか。
ライナーの首元にいた新兵たちが、離散して馬に乗った。
僅かに後ろを振り向いてみると―――――やはり、巨人たちの視線がライナーに移っている。
「総員散開!!巨人から距離を取れ!!!」
目論み通り―――――巨人同士の混戦にもつれこませることができた。
完全にライナーは足止めした。
だが、ここでエレンまで食われてしまっては話にならない。
「これからだ!!総員!!!突撃!!!」
私の指示に、調査兵団の面々ですら驚愕の表情を見せる。
あの中に、巨人が群がる中に飛び込めという指示だ。
――――ある者には、『死ね』と聞こえたかもしれない。
「人類存亡の命運は今!!この瞬間に決定する!!エレンなくして人類がこの地上に生息できる未来など永遠に訪れない!!」
――――生息はできるだろう、きっと。
殺し合って支配し合って――――この狭い檻の中で。
だがそこにはもう人間が人間であるという理性的な社会などなく――――ただ、強者が弱者を糧に命を永らえるだけだ。
そんな未来は望まない。
ならば、今この瞬間に犠牲を厭ってはいられない。
――――何人死のうと、例え私が死のうと――――、今エレンを取り返す。