第125章 代償
しばらく走って、ようやく巨大樹の森が見えて来た。
その時、いち早くミカサとアルミンが森の中の異変に気付いた。
「光った?!」
「エルヴィン団長!!今森の奥の方で……一瞬光が見えました!巨人に変化した光だと思われます!」
森の中から、今まで木の上で休む獲物を狙っていたのであろう巨人たちが、新たな大量の餌の到来に歓喜したのか、ぞろぞろと姿を見せ始めた。
「総員散開!!!エレンを見つけ出し奪還せよ!!!敵は既に巨人化したと思われる!!戦闘が目的ではない!!何より奪い去ることを優先せよ!!!」
エルヴィン団長の指示を全て聞くことなく、あっけなく食われる憲兵を横目に――――俺達は離散してエレンを探した。
その時に、聞きたくもねぇ巨人の叫び声を聞いた。
「ギィヤァアァァァアアアア!!!!」
「なんだ?!!」
声のする方に向かって立体機動に移って刃を抜き、その声の主を探す。
と、そこには―――――巨大な樹木に貼りつくように、異形の巨人がこっちを見ている。黒髪をゆらして―――――、頭がでかくて手が長くアンバランスだ。
――――俺はこいつを、見たことがある。
「―――――ジャック?!?!」
あの日、ウォール・マリア奪還作戦の裏で行われた俺達の密命。奇行種の捕獲を目論んだ時に、あいつをたしかに拘束した。
――――項を守ったり、仲間を呼んだような不可思議な行動をした奴だ。
「こんなところに!!……削いでやる…っ…!」
仲間が、憎しみを込めて刃を振るおうとした時、新兵のコニーがそれを止めた。
「待ってください!!こいつはユミルです!攫われたユミルの巨人の姿です!!」
コニーはユミルと呼んだその異形に取り付いて、エレンやライナー・ベルトルトの所在を尋ねる。
だが……様子がおかしい。
答える素振りはおろか、何かを探すようにきょろきょろと、1人ずつの兵士を目視しているように見えた。