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【進撃の巨人】片翼のきみと

第125章 代償




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「――――総員準備!!!立体機動で降下、後すぐに騎乗して陣形を形成!!行くぞ!!!!!」





エルヴィン団長の号令が響く。

壁上から飛び発つ多くの兵士のマントがなびく。

いつもと違うのは―――――自由の翼だけではなく、気高い一角獣も、茨で民を守る薔薇も――――問わずに人類のために、巨人の闊歩する平野へと駆けていく。

憲兵団の兵士は壁外など初めての経験だ。

怖気づいて動けなくなる兵士もいるだろう。

いつもとは段違いの采配の難しさだ。



――――私は行かない方がいい。エルヴィン団長に、余計な心配の種を増やすのは得策ではない。交わした言葉の中に『みんなを頼む』と、私を信じてくれていることがわかる一言があった。期待に応えて見せる。






だから―――――どうか、無事で。






なびくマントを見送って、ハンジさんの容体を伺う。

外傷はそこそこあるものの、骨折や内臓の損傷などの重傷ではない。一安心だ。モブリットさんやケイジさん、アーベルさんも中傷と言ったところだ。

トロスト区の病院で静養すれば、1週間程度で回復するだろう。生きていてくれて、嬉しい。





―――――だって―――――、もう、会えない。





ミケさんに。ナナバさんに。ゲルガーさんに………。

リーネさんとも、ヘニングさんとももっともっと話したかった。知りたかった。



亡骸もなく、何の遺品もなく、弔うことすらできず……残酷な現実が次々に私たちを見舞う。






――――ミケさん。





一人で9体の巨人に挑んだとコニーが言っていた。

なんて勇敢で、仲間想いな――――……。



孤独に戦って――――誰にも知られず朽ちていく。

最期にミケさんは何を見て、何を想ったのか。その想いを誰かに託すことすら許されず―――――悔いはなかっただろうか。

苦しまなかっただろうか。

いつものミケさんのように気高く――――使命を全うした最期だったのか。




胸の奥から湧き上がる吐き気を、両手を口に当てて蹲り、必死に押さえる。








そうだ、これが現実だ。








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