第124章 白日
「そうだ。はやり病が蔓延してな。今から――――もう15年以上前だ。治療法のない病だったから、街の医者もみんなお手上げ状態だった。王都の医院にも特効薬なんかはなかったって聞いたぜ。―――にもかかわらず、イェーガー先生は抗体を持っていた。まぁそれで……俺のかみさんも助かったからな!俺の恩人でもある。」
――――抗体……?
王都の病院……きっとオーウェンズだ。
そこにすら無い薬を、抗体を――――一介の1人の医師がどうやって手に入れた――――?
「…………。」
「――――だから微力ながら俺がエレンを守るのは、恩返しなのさ。」
ワーナーさんの日記に記された“グリシャ・イェーガー”の文字が、無関係ではないと――――確信した。
「……ハンネスさん、元々イェーガー先生はシガンシナ区の出身だったのですか……?」
「……いや…?俺もよく覚えてないが………、駐屯兵団の地下牢から解放されて、シガンシナ区に移り住んだんじゃなかったかな……。」
「地下牢……?」
どういうこと?
罪人だった……?としても、駐屯兵団でずっとシガンシナ区を守ってきたハンネスさんが“移り住んで来た”というくらいだから……元々の出生地ではないってことだ。
「総員!!!!準備はいいか!!班構成を伝える!!!」
ぐるぐると頭の中で考えていると、エルヴィン団長が招集する声が聞こえた。
「おっと!俺は行くぜ。ナナはここで待つんだろ?」
「あ、はい……。」
「――――必ずエレンを連れ戻してくるからよ。待ってろ。」
「……はい!」
ハンネスさんは笑って駆けていった。
ハンネスさんが戻って来たら――――エレンと一緒に、もっと色々とイェーガー先生のことを聞かなくちゃ。