第124章 白日
私が治療を進めていると、見覚えのある懐かしい人が私を呼んだ。
「――――ナナ?お前……ナナか?」
振り返るとそこには――――、あの頃は平和な日常の中で、エレンやミカサがよくお世話になっていた駐屯兵団の――――ハンネスさんがいた。
「ハンネスさん……!」
思わず立ち上がって駆け寄る。
ハンネスさんははは、と笑いながら私の肩をぽん、と叩いた。
「やっぱりそうかよ!いやたまげた……!調査兵団の団長補佐になったって噂は聞いてたが……!」
「はい、ハンネスさんも……ご無事で……!まさか、こんなところで会えるなんて……!」
「――――悪ぃな、また――――……エレンを守ってやれなくて。」
「――――そんな……。」
「――――これから取り返せばいい。でしょ?」
私の横に、すっと立ったのはミカサだ。
強い意志を持った目をして、エレンがいるであろう壁の向こうに目をやった。
「―――……うん、そうだねミカサ……。」
「……あれだろ?エレンの家の地下室に巨人の秘密があるとか……なんとかってやつだろ?……エレンを取り返してウォール・マリアを塞いで……エレンの家に辿り着けたら――――……この悪夢は覚めてくれるといいんだがな……。」
「はい……。」
ハンネスさんもまた、かつて自分が守っていた場所――――シガンシナ区の方向に遠い目を向けた。
――――そう言えば、ハンネスさんにイェーガー先生のことを聞いたことがなかった。もしかしたら……古い付き合いだとしたら、何かを知っているかもしれない。
「あ、そう言えば……ハンネスさんは、イェーガー先生とも親しかったんですか?」
「あん?」
「例えばエレンが生まれる前とか……どんな様子だったのかな、って………。」
「ああ……そうだな……イェーガー先生はシガンシナ区の街を救った恩人だからな。」
「救った……?」