第124章 白日
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憲兵団を引き連れ、壁上をトロスト区からクロルバ区の方角へと馬で移動する。
そのためにリフトを運び込んだり、兵糧を積み込んだりと大急ぎで準備が行われる中、視線を感じた方向に目をやると―――――、ニック司祭の見張りをしているリヴァイ兵士長と目があった。
引かれるようにその人の元へと歩を進める。
「――――なんだ、どうした。」
リヴァイ兵士長は座ったまま腕を組んで、私を見上げて不機嫌そうに言った。
「……いや、何か用があるのかなって……。」
「……ねぇよ。」
「えっ。だって見てたでしょう?」
「…………。」
何も言わずに目を逸らして、小さく舌打ちをした。
――――分かってる。
行くなと言ってもお前は行くんだろうが。とでも、言いたいのだろう。
「――――そうだ、足……無茶はしないでくださいね。かなりしっかりと固定しています。歩きづらいかもしれませんが……むしろこの固定で差し障るような動きはしないでください。」
「――――ああ。」
「では。行ってきます。」
ずっと不機嫌の様子を崩さないから、なんだか面白くて。
不謹慎にも、ふ、と笑ってしまった。
そんな私をちらりと見て、小さく口を開いた。
『――――死ぬなよ。』
私も同時にその言葉を告げた。
声が重なったことにリヴァイ兵士長は少し驚いて――――かつ少し不機嫌に私を見ている。
ほら、当たった。
と、にんまりとして見せる。
「――――死にません。行ってきます。」
「ちっ……生意気な……。」
リヴァイ兵士長に背を向ける。
あなたが育ててくれたこの背の翼を背負っていることを誇りに思う。
“お前にしかできないことがある”――――初めて一緒に行った壁外調査で、そう教えてくれた。
“戦えないことを引け目に思うな”と。
例え死んだ仲間たちが夢枕に立っても、私の心が弱くて――――ー生きている意味すら、分からなくなっても。
あの日の言葉を思い出せば、私は何度でも立ち上がれる。